石油ファンヒーターは電気ストーブなどと比べて早く部屋を暖めることができる一方で、排気による空気汚染が大きな欠点となっていることが、調べているうちにわかってきた。
そこでここでは、石油ファンヒーターに加え、ガスファンヒーターも含めて空気汚染の実態がどうなのか、調査をした結果をまとめようと思う。参考になりそうな記事を紹介していく。
暖房使用による空気汚染防止のために | 東京都健康安全研究センター
東京都健康安全研究センターによる、暖房機器の空気汚染に関する調査事例。気管支炎や喘息の原因となる窒素酸化物の濃度を、それぞれの暖房機器を使用した部屋における24時間の平均値で表したのが上記のグラフ(A宅、B宅の表記だと暖房機器との対応がわかりにくいので使用暖房機器の種類を元グラフに私が追加した)。
上記の記事によると二酸化窒素の環境基準は24時間平均値で0.06ppmとのことで、石油ファンヒーター、ガスファンヒーターともに基準値を大きく超えていることがわかる。また、ガスファンヒーターと石油ファンヒーターの比較では、1.5倍から2倍近く石油ファンヒーターによる窒素酸化物の濃度が高くなっている。
以上のことから、結論としてはガスファンヒーター、石油ファンヒーターともに窒素酸化物による室内の空気汚染を引き起こすが、石油ファンヒーターによる空気汚染が特に顕著であることがわかるであろう。
石油ファンヒーター等の使用時は効率的な換気が不可欠です! | 東京くらしWEB
東京都の生活文化スポーツ局による暖房機器使用時の二酸化窒素濃度の推移調査結果。こちらのデータによると、ガスファンヒーター(プロパンガス用)の二酸化窒素濃度の上昇が顕著になっている。一般的に使用される機種では、石油ファンヒーター(3.20kWが相場)よりもガスファンヒーター(3.85kWがプロパンガス用の相場)の方が暖房出力が高いので、それが一因になっている可能性がある。
それともう一点気になるのは、石油ファンヒーターの中の1機種に関して、明らかに他より空気汚染の著しい物があるということだ。これがどのメーカーの機種なのかは、下記の別の調査で推定ができそうだ。
石油ファンヒーターによる室内空気汚染 - n-20071005_1(PDF)
国民生活センターにおける石油ファンヒーターの二酸化窒素室内濃度変化のテストを行ったもので、機種の選定に関しては、2005年度の石油ファンヒーターシェアの93%を占めるダイニチ工業、コロナ、トヨトミの大手3社の木造9畳タイプ(このタイプがファンヒーターでは一番売れている)のもので行っている。
それぞれ暖房出力も3.2kW、3.19kW、3.19kWでほぼ変わらず、タンク容量も5.0Lで同じ、ということで条件的には同じと考えてよいだろう。ところが結果を見るとコロナ製ファンヒーターの二酸化窒素室内濃度が他の2社とものと比較して明らかに大きいようだ。逆にトヨトミのものは、上記二酸化窒素濃度だけでなく、一酸化窒素濃度も他の2社の機種と比べて抑えられているのが元記事のデータを確認することでわかる。
先の東京都の生活文化スポーツ局の調査結果には、機種銘柄が書かれていないので、一つだけ明らかに空気汚染が顕著だった機種がコロナ製のものであるかどうかはわからないのだが、こちらの調査と同様に石油ファンヒーター3機種で調査をしているところから推測するに、ダイニチ、コロナ、トヨトミの3社のものを使用して調査をしている可能性は高いと言えるだろう。
以上を踏まえると、コロナ製の石油ファンヒーターに関しては選ぶのを控えたほうがよいかもしれない。
東京ガス : 東京ガスグループCSRレポート2015 / 東京ガスグループのCSR / 天然ガスと都市ガスシステムの特長
東京ガスのページに記載された、石炭、石油、天然ガスに関する二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物の含有量に関する比較表。石炭を100とした場合の比較だが、基準が何なのかはイマイチ不明。燃焼熱量ベースと推測するが。
また、石油がこの場合ガソリンなのか、灯油なのか、それとも軽油なのか、それらの混合物なのかも不明であるが、この図を見る限りでは石油の一種である灯油よりも天然ガス(都市ガス)の方が空気を汚染させる窒素酸化物や硫黄酸化物の量が少ないことがわかるだろう。
ちなみに天然ガス(LNG=Liquefied Natural Gas)は都市ガスの主要成分のことで、プロパンガスはLPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化石油ガスと呼ばれる。つまりプロパンガスは石油から生成されたガスである。都市ガスは軽く、プロパンガスは重いのは、このように生成される場所や原料が全く違うことに起因している。
日本LPガス協会(Japan LP Gas Association):LPガスの概要:LPガスの環境性
二酸化炭素限定であるが、原油を1とした場合の単位熱量あたりの二酸化炭素排出量のグラフが上記。二酸化炭素排出量の関係は灯油>LPガス>都市ガスとなっている。窒素酸化物や硫黄酸化物の排出量比較の資料は見つけられなかったが、先のデータも踏まえて考えると、窒素酸化物と硫黄酸化物の排出量に関しても同じような関係になっていると推測できるであろう。
以上、結論としては、
・石油ファンヒーターもガスファンヒーターも気管支炎や喘息の原因となる窒素酸化物を発生させる
・灯油を使った石油ファンヒーターの空気汚染は特にひどく、ガスファンヒーターの1.5倍から2倍程度の窒素酸化物を発生させる
・石油ファンヒーターのシェア90%以上を占める大手3社、ダイニチ、コロナ、トヨトミの中ではコロナ製のファンヒーターの空気汚染が特にひどいというデータが確認されている
・複数のソースを踏まえて考えると、灯油、LPガス(プロパンガス)、都市ガスの順で窒素酸化物等による空気汚染が激しいことが推定される
となる。