石油ストーブのシェアはコロナとトヨトミで二分されている

石油ストーブのシェアに関して、まともなソースにたどり着かず、中にはトヨトミが1位とかいう間違った情報まであるので、ここにきちんと情報をまとめておこうと思う。

まずはネット上の信頼性のあるソースから。

株式会社トヨトミ|企業情報 | トヨトミはこんな会社 | Network
いわゆる石油ストーブというのは、家庭用の石油ポータブルストーブのことをイメージされる方がほとんどだと思うので、その文脈で話を進めると、上記トヨトミのページで国内市場におけるトヨトミの石油ポータブルストーブのシェアは約40%との記載がある。

コロナ トップシェア狙い、集約合理化 今町コロナ増築で、石油ストーブ一貫生産
2015年5月20日に越後ジャーナルに掲載された記事にて、コロナ社長の「ポータブル石油ストーブ(反射式石油ストーブ)には安定した国内需要がある。さらなるシェアアップを狙い、ダントツのトップシェアに」という発言が載っている。これを踏まえると、
・現在のトップシェアはコロナ(もしコロナがシェア2位ならシェア逆転に類する言葉を使うはず)
・ただし石油ストーブシェア2位のトヨトミとは拮抗している状態(だからダントツのトップシェアにという発言になる)
・トヨトミがシェア約40%であることを踏まえると、コロナもシェア40%台で、2社で家庭用ポータブル石油ストーブのシェアは8割を超えている状態
ということが言えるであろう。

もう一つ、今度は「家電流通データ総覧」発行元のリック推定による石油ストーブのシェアと、国内出荷台数推移から算出される、各メーカーの出荷台数推移を見てみよう。ちなみにリックは2008年以降(家電流通データ総覧2009以降)はメーカー別シェアの項目を記載しなくなったので、最新のデータは2007年度のものまでになる。

メーカー別
シェア
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
コロナ 36% 36% 38% 39% 40% 42% 42%
トヨトミ 32% 32% 33% 33% 33% 34% 35%
その他 32% 32% 29% 28% 27% 24% 23%
合計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%

メーカー別
出荷台数
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
コロナ 69.2万台 56.1万台 54.6万台 53.9万台 62.2万台 60.8万台 60.9万台
トヨトミ 61.5万台 49.9万台 47.5万台 45.6万台 51.3万台 49.2万台 50.8万台
その他 61.5万台 49.9万台 41.7万台 38.7万台 42.0万台 34.8万台 33.4万台
合計 192.2万台 155.8万台 143.8万台 138.2万台 155.6万台 144.8万台 145.0万台

ということで、2007年度の時点でコロナ42%、トヨトミ35%であったことを踏まえると、シェア推移の流れから、現在はさらにその他の部分のシェアが低くなっていることが推測できるであろう。

ちなみに余談であるが、2005年度までは家電メーカーであるシャープの石油ストーブのシェアが6%あった。ただ、どうもシャープは2000年代のどこかのタイミングで石油ストーブ市場から撤退をしているようである。石油ファンヒーター市場から2007年春に撤退したという情報はネット上でも見つかるのだが、石油ストーブに関する撤退情報は見つけることができなかった。ただ、下記のページを踏まえると、
暖房機(加湿セラミックファンヒーター/セラミックファンヒーター/ホットカーペット/石油ファンヒーター/FF式石暖/石油ストーブ)│取扱説明書ダウンロードサービス:シャープ
石油ファンヒーターは2005年8月まで発売機種があったのに対して、石油ストーブは2000年8月が最後の発売年月になっているため、石油ファンヒーターよりも早く撤退をしているという推測が成り立つ。ちなみに楽天やアマゾンなどの大手ECサイトでもシャープ製石油ストーブの販売はないので、ここからも既に販売中止になっていることが推測できる。

以上、これらを踏まえると、2007年時点よりもさらにコロナとトヨトミのポータブル石油ストーブ市場の寡占化が進んでいることはほぼ間違いないと言えるだろう。


ちなみに石油ストーブの選び方に関して少々言及しておくと、ファンヒーターと比べると検討項目はかなり少なくなる。端的に言うと、給油時の手や床の汚れなさを重視するならコロナ、燃焼時の空気の綺麗さを重視するならトヨトミという選択になる。

石油ストーブ自体はいろいろな種類があって、燃焼方式なら芯式とポット式、熱の伝播における方式なら反射式と対流式の2つがあるのだが、ポット式は煙突付きの寒冷地用ストーブで使われる方式であり、対流式は学校などで使われる円筒状の大型ストーブのことなので、いわゆる家庭で使われる後ろに鏡みたいなやつ(反射板という)がついた小型のストーブ、ポータブル石油ストーブに関しては、反射型芯式ストーブしかないのである。

トヨトミの石油ストーブの特徴は2回燃やすことで灯油の不完全燃焼を大幅に減らし、排気を綺麗にするダブルクリーンという特許を取得している機構にある。詳細は下記参照。



一方のコロナは「よごれま栓」という手や床などを汚さない給油機構の利便性に特徴がある。灯油まみれの蓋に触らず給油できるというものなのだが、これも見たほうが早いと思うので動画を載せておく。


以上、給油時の利便性を選ぶか、排気の綺麗さを選ぶかでコロナかトヨトミを選べばよいかと思う。なお、灯油の発生熱量は、メーカーや燃焼方式によらず一定なので、どちらのメーカーを選んでも暖房費、燃料代の違いはない。暖房出力に比例して灯油の消費量が変わるというそれだけである。


ちなみに暖房機器としての暖房効率の良さとしては、石油ストーブはエアコンに次ぐものである。
暖房器具の強さと暖房費・電気代と暖房効率を徹底比較した結果まとめ
これは電気やガスよりも灯油のほうが安い(1円あたりの発生熱量が多い)のと、石油ストーブは石油ファンヒーターと異なり電気を使用しないので、その分ファンヒーターより安く上がるという理由によるものである。ちなみにエアコンは電気を熱に変えるのではなく、熱ポンプという仕組みを使って、外部から熱を持ってきているため、他の方式よりも異様に暖房効率がよいのである。

こうして見ると、主な暖房機器の中で唯一電気を全く使用しないのが石油ストーブなので、停電等の災害に強く、野外でも使用できることがわかる。これは石油ストーブの大きな長所と言えるだろう。


石油ファンヒーターの選び方とおすすめまとめ

石油ファンヒーターに関して、通常の家電製品とは主要なメーカーが異なるなど、初めて選ぶ方には馴染みのない部分も多々あるかと思うので、選び方のポイントやおすすめなどを紹介していこうと思う。

ちょっとこの記事書くために徹底的に調べていたら、相当長くなってしまったので、最初に結論だけまとめておく。

・暖房全体という観点で見ると、石油ファンヒーターはエアコン、石油ストーブに次いで暖房効率(1円あたりの発生熱量)が高い
・各暖房機器の1番の売れ筋で比較をした場合、石油ファンヒーターはガスファンヒーターに次ぐ暖房能力を持っている
・石油ファンヒーターの欠点は、スイッチを入れてからの点火が遅いことと排気が汚いこと
・石油ファンヒーターを販売しているのは現在4社。シェアはダイニチが約50%、コロナが約40%、トヨトミが数%でアラジンが若干量
・石油ファンヒーターには3つの燃焼方式があり、主要3社はそれぞれ別の燃焼方式を採用している
・ダイニチが採用するブンゼン気化式は一番電気を食うが、着火が早く、燃焼が安定している
・コロナが採用する油圧送霧化式は、電気代は少なくて済むが、燃焼が安定しないので排気が汚い
・トヨトミが採用するポット式は、原理的には最も単純で、電気代も少なく、去年の灯油も使用できるほど不純物に強い
・アラジンはナショナル(現パナソニック)のファンヒーター技術を引き継いでおり、ブンゼン気化式を採用しているが、着火が遅く、その代わり電気代を食わないというダイニチのものとは異なる特性を持っている
・石油ファンヒーター主要3社の中ではコロナの排気の汚さが際立っていることが国民生活センターのテストで示されている
・トヨトミが使用しているポット式というのは元々は寒冷地用の煙突付きストーブで使用されている、排気の汚い燃焼方式であったが、トヨトミがそれを改良し、ファンヒーターとして室内排気できる特許技術を確立した。排気は主要3社の中で一番きれい
・3社の燃焼方式による特徴の違いとして、電気代の大小がよく議論されるが、実は暖房代に占める電気代の割合は1割に満たない程度であり、大半は灯油代である
・使い勝手としては、「よごれま栓」という手や床を汚さない給油機構を採用しているコロナが頭一つ抜けている
・コロナには秒速点火という7秒で点火できる機能が付いているが、これは待機時間中もダイニチの最大燃焼時並の大電力を使用して燃焼筒を温め続けるという欠陥機能である。点火時間のメーカー比較時はコロナの点火時間は7秒ではなく本来の150秒で行うべき
・結論として、点火時間の短さやシェアの多さで選ぶならダイニチ、消費電力や排気などの点火時間を除く総合スペックで選ぶならトヨトミ、「よごれま栓」の給油時の使い勝手で選ぶならコロナがおすすめとなる。アラジンに関してはおすすめできる要素がない


では詳細に移ろう。

石油ファンヒーターの暖房費用と暖房の強さについて

まず最初に暖房器具全体の中における石油ファンヒーターの位置付けから説明をしたいと思う。これは各暖房機器の暖房コストと暖房能力のポジショニングマップで見るのがわかりやすいかと。
暖房器具の強さと暖房費・電気代と暖房効率を徹底比較した結果まとめ
詳細に関して知りたい方は、上記の記事をご確認いただきたいが、それぞれの暖房器具の売れ筋機種の暖房能力をベースにして、暖房の強さと1円あたりの発生熱量の2軸を使ってプロットをしている。右側にあるものほど、安価に熱を発生させることができ、上側にあるものほど暖房能力が高いので、部屋を早く暖めることができる。

横軸を1時間あたりの暖房費にしなかったのは、いくら1時間あたりの暖房費用が安くても、熱をほとんど発生させないようなものでは意味が無いからである。上記の元記事の方に1時間あたりの暖房費用も参考情報として記載しているので、気になる方はそちらをご確認いただきたい。

さて、上記ポジショニングマップから読み取れる石油ファンヒーターの位置付けは、暖房のコスト(暖房効率)はエアコン、石油ストーブに次いで安く、暖房の強さもガスファンヒーターに次いで高い、というものである。

外気に圧力を掛けることで熱を取り出すヒートポンプの仕組みを使ったエアコンは、コストパフォーマンスとしては最強なのだが、それに次いでコストパフォーマンスが高いのが石油暖房である。石油ファンヒーターは石油ストーブと異なり電気をある程度使うため、その分若干コストパフォーマンスが落ちるのだが、熱風を吹き出す仕組みなので、寒い日でもヒーター前の人間を早く暖めることができるというのが最大の魅力であろう。

また、寒冷地では外気から熱を取り出すことが難しくなり、エアコンの効率も落ちるため、まだまだ石油暖房が中心となっている。どんな地域でも比較的安価に高い暖房出力が得られるというのは石油ファンヒーターの大きなメリットといえるだろう。

一方、デメリットとしては、灯油を燃焼させると窒素酸化物や硫黄酸化物など、喘息等の原因になるような有害物質が他の暖房に比べて多く発生するという点が一番大きいであろう。これは石油暖房を使った時の独特な臭いで経験している人も多いはずだ。なので、こまめな換気が使用に際しては必須になる。

また、他の電気暖房やガス暖房と比べて、手入れ・メンテナンスが面倒という点もあるだろう。灯油を18Lタンクに入れて、それをファンヒーターのタンクに定期的に入れなければならないというのは、スイッチを付けるだけで延々と稼働し続けるエアコンやガスファンヒーターなどと比較して、非常に面倒である。

その他、ファンヒーターが動作するには、灯油を燃焼できる温度まで暖めなければならないので、スイッチを入れてから点火するまで何分か待たなければならないというデメリットもある。

以上、他の暖房機器との比較を行うことで、石油ファンヒーターの位置付けがある程度見えてきたのではないかと思う。どこでも比較的安価に、比較的強力な暖房として使用できるところが石油ファンヒーターの魅力と言えるだろう。

石油ファンヒーターの主要メーカーとシェアについて

石油ファンヒーターの主要メーカーについては、他の家電製品のメーカーとは異なる名前が登場するので、馴染みのない人もいるだろう。これは石油を使った暖房製品は、窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害物質や一酸化炭素を出すこともあるなど、製品の製造リスクがあるため、石油暖房製品の専業メーカー以外の総合家電メーカーが撤退してしまったことが関係している。

なお、下記のソースによると、2006年時点では石油ファンヒーターのシェアはダイニチ、コロナ、トヨトミの3社で93%のシェアを占めるとのこと。
石油ファンヒーターによる室内空気汚染 - n-20071005_1(PDF)

で、ここから個別メーカーの細かいシェアに関しては、ネット上のソースだけでは特定が難しいようだ。というのはダイニチに関しては情報を開示しているのだが、コロナ、トヨトミに関しては、どう探しても石油ファンヒーター単独の市場シェアや販売台数等のデータを全く開示していないのだ。

まずは石油ファンヒーター市場全体の出荷台数と金額から。下記に数字が載っている。
販売実績と予測 | 一般社団法人 日本ガス石油機器工業会
これによると直近2014年度の出荷見込み数値で235万台、311億円となっている。

次に、ダイニチの下記のサイトによると、2014年度の販売台数シェアは52.6%とのこと。
ダイニチ工業が3分でわかる | ダイニチ工業 就職応援サイト
これを踏まえると、ダイニチの2014年度の販売台数推計は123万台ということになる。

さらに、2013年1月7日に執筆されたものと思われる下記の記事によると、新潟県のメーカーで石油ファンヒーターの製造台数のシェア9割を占めているとのこと。
にいがた自慢:/5 シェア1位、石油ファンヒーター /新潟 | 住民安全ネットワークジャパン|ほっとタウン情報
新潟県の石油ファンヒーター製造メーカーはダイニチとコロナの2社であり、業界2位はコロナ社と記載があるので、コロナ社のシェアは台数ベースで4割と置いて良いだろう。そうすると、コロナの2014年度の販売台数推計は94万台ということになる。

上記記事によると、2013年1月時点でファンヒーターを製造、もしくは販売しているのは全部で4社とのことで、残りの約10%は名古屋に本社と工場があるトヨトミと、アラジンブランドで石油ストーブや石油ファンヒーターを展開する、輸入元の株式会社千石と、販売元の千石子会社、日本エー・アイ・シーということになる。

トヨトミに関しては販売台数につながる情報はなし。アラジンに関しても、特定1機種のリコール台数の情報はあるものの、それだけだと年間総出荷台数を計算するのは難しそう。

これ以上の情報に関しては、ネット上ではどんなに検索しても見つからなかったので、GfK Japanによる「全国有力家電量販店の販売実績集計」データ等を見られる業界関係者以外は細かいシェアはわからなそう。

そこで、先に挙げた、「石油ファンヒーターによる室内空気汚染」のレポートにて、国民生活センターがメーカー別シェアのソースとして参照していた「家電流通データ総覧」という業界資料を確認することにした。

まず、「家電流通データ総覧」は毎年出版されているのだが、石油ファンヒーターのメーカー別シェアが掲載されているのは2008年版まで。それ以降は集計項目が変わっているので、一般的にアクセス可能なデータとして最新のものは2007年度時点のシェアまでということになる。

また、石油ファンヒーターの国内出荷台数に関しては、日本ガス石油機器工業会が出しているソースと、経済産業省・鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計を元にする方法の2種類があるが、「家電流通データ総覧」の他のグラフを見るに、メーカー別シェアは日本ガス石油機器工業会の数値をベースにして推計をしているものと思われる。

下記が、「家電流通データ総覧」発行元のリック推定による石油ファンヒーターのメーカー別シェア。合わせて出荷台数にシェア率を掛けあわせたメーカー別推定出荷台数も載せておこう。

石油ファンヒーターのメーカー別シェア推移
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
ダイニチ工業 21% 26% 30% 36% 46% 48% 49%
コロナ 19% 22% 24% 32% 37% 38% 38%
トヨトミ 6% 6% 7% 9% 10% 8% 7%
その他 54% 46% 39% 23% 7% 6% 6%
合計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%

石油ファンヒーターのメーカー別国内出荷台数推移
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
ダイニチ工業 79万台 91万台 103万台 118万台 159万台 140万台 147万台
コロナ 71万台 77万台 82万台 105万台 128万台 110万台 114万台
トヨトミ 23万台 21万台 24万台 29万台 35万台 23万台 21万台
その他 203万台 161万台 134万台 75万台 24万台 17万台 18万台
合計 375万台 349万台 343万台 327万台 345万台 291万台 301万台

なお、ダイニチ工業の就職応援サイトに記載されているダイニチのシェアに関しても、2007年度で48.8%と記載があるので、上記数値とほぼ一致しており、信頼度の高い数値と見てよいかと思う。ダイニチ工業サイト記載の2007年度以降のシェア推移は2008年度が59.1%、2009年度が53.3%、2010年度が49.3%、2011年度が48.9%、2012年度が49.9%、2013年度が53.9%、2014年度が52.6%となっている。

また、上記に記載した石油ファンヒーターメーカー3社以外でいうと、以前はシャープが2002年度までは10%を超えるシェアを持っていたが、2007年春で石油ファンヒーター市場からは撤退をしている。2005年度時点のシャープのシェアは6%であり、この時点のシャープを除くメーカーのシェアが1%となっていることを踏まえると、現在、ダイニチ、コロナ、トヨトミ以外のメーカーシェアはほとんどないと考えて良いだろう。

ということで、上記を踏まえた現在の石油ファンヒーターメーカー別シェアの推定は、ダイニチ工業が約53%、コロナが約40%で、残りの7%前後がほぼトヨトミということになるかと。

なお、日本エー・アイ・シーが販売しているアラジンブランドの石油ファンヒーターは、下記消費者庁のリコールに関する資料によると2010年8月から2010年12月までの5ヶ月間の間に、リコール対象1機種で151,182台は販売していることが明らかになっているので、
リコール製品による重大製品事故に御注意ください | 消費者庁
これを踏まえると、アラジンの石油ファンヒーター分がシェア推計、もしくは出荷台数に反映されていないのではないかという疑念は残るところである。

さらに調べたところ、日本エー・アイ・シーの親会社である株式会社千石のページに、工場がある中国での石油ファンヒーターの生産台数は公開されているので、この数値をアラジンの石油ファンヒーターの台数として使うことである程度の精度の推定ができるかもしれない。
中国工場|株式会社千石
過去の同ページのデータも合わせて拾った結果、アラジンの石油ファンヒーターの生産台数は、2011年度が30万台、2013年度が17.4万台、2014年度が11.7万台とのこと。ただ、他の統計資料を見ると、生産台数と出荷台数は少なくとも1割、多い年は3割くらい差分があったりするので、他のメーカーの国内出荷台数と比較をする際には、いくらか数値を差し引いて考えるべきだろう。


石油ファンヒーターの3つの燃焼方式と、そのメリットとデメリット

石油ファンヒーターでどこのメーカーを選択するかを検討する際に、知っておくべき知識として優先順位が高いのは、この3つの燃焼方式についてであろう。私自身がこの件に関して詳しいわけではないので、参考になるサイトを2つほど紹介しておこう。

よくあるご質問 -石油暖房機器-│お客様サポート│ダイニチ工業株式会社│DAINICHI
石油ファンヒータートップシェアの企業、ダイニチ工業による石油ファンヒーターの燃焼方式解説ページ。

石油暖房機の種類 | 暖房機の館
石油ファンヒーターの修理を600件以上手がけてきた修理屋の方による燃焼方式解説ページ。このページは修理屋観点から情報が記載されていることもあり、かなり参考になるものが多いので、一度見ておくとよいかと。例えば灯油にも品質があって、家庭用の不純物が少ない1号灯油と、業務用の安価だが不純物が多い2号灯油の2種類があり、灯油の鮮度が落ちると、1号灯油も酸化して品質が悪化し、2号灯油に近いものになって石油ファンヒーターの故障の原因になるなどの情報は、ぜひ知っておくべき知識だと思う。

詳しくは上記2サイトを見てもらうのがよいと思うが、ちょっと専門用語があって理解できない部分などもあったため、上記2サイトをベースにして、初心者にわかりにくい部分を適宜補足して、3種類の燃焼方式について、ここにまとめようと思う。

ブンゼン気化式(ブンゼン式)
ダイニチが用いている燃焼方式。ブンゼン式に関しては、ガスコンロなどで一般的に使われている方式で、まずはブンゼンバーナーに関して理解するのがこの方式を理解する近道であろう。

ブンゼンバーナーというのはドイツの化学者であるロベルト・ブンゼンが改良したガスバーナーのこと。学校の実験で経験した人も多いと思うが、ガスというのはそれ単独で燃えることは出来ず、空気を適切な割合で混ぜなければならない。

(画像は「ブンゼンバーナー - Wikipedia」より)
上記の画像の例で言うと、一番左は空気が足りなくて不完全燃焼を起こしている状態、そして一番左の青々と燃えているのが、ガスに適切な量の空気が混ざって完全燃焼をしている状態である。

ブンゼンバーナーの特徴は、ガスを噴出する勢いを使って管の側部の隙間から適切な量の空気を巻き込み(これをベンチェリ効果という。下記の画像のようなイメージ)、
それによって完全燃焼の炎を作っている点にある。燃焼に必要な空気を、ファンやポンプなどの力を借りずに、ガス噴出の勢いだけで確保しているということ。これが後で解説する油圧送霧化式(ポンプ霧吹方式)との最大の違いになるので覚えておこう。

ここまで理解できれば、石油ファンヒーターにおけるブンゼン気化式の理解は容易である。つまりは、気化器で灯油を電熱ヒーターで温めてガス化させたあとは、ブンゼンバーナーやガスコンロと同じことをやっているのである。

ちなみに、ブンゼン気化式の図にあったソレノイドというのは下記のような動きをする部品。灯油が温まってできたガスを押し出す役割を担っているわけだ。


他の燃焼方式との比較は、後で詳しくやるが、ポイントとしては、気化器で灯油をガス化させる際に、電熱ヒーターを使い続けることになるという点である。これが長所にも短所にもなる。長所としては、小さな気化器の中で灯油を電気の力で温めるため、点火までの待ち時間が少ないという点、裏返しの短所として、電気代が他の方式より多くかかってしまうという点である。

また、もう一つの長所として、ガスコンロと同様に、火力の大小に関わらず適切な量の空気が自動的に供給される仕組みのため、炎が完全燃焼になるという点がある。不完全燃焼が起きると、一酸化炭素や窒素酸化物等の有害物質がそれだけ多く排出されることになるため、燃焼の安定性が高いというのは、石油ファンヒーターにおける、重要な要素の一つである。


油圧送霧化式(ポンプ霧吹方式)
コロナが用いている燃焼方式。ブンゼン気化式を理解した上でこの方式を見ると、同じように灯油を温めてガス化させ、それを燃焼させているにも関わらず、かなり違った原理で作動していることがわかるであろう。ブンゼン気化式との大きな違いは2点。燃焼に必要な空気をファンによって得ていることと、灯油をガス化させるための熱を、電熱ヒーターからではなく、既に燃えているバーナーの炎から得ていることである。

灯油をガス化させるためには、先ほどのブンゼン式の気化器よりも大きな気化筒を、電熱ヒーターで温めなければならないので、点火までに時間がかかってしまうのだが、一旦点火してしまえば、あとはバーナーの炎の熱で気化筒の温度を維持できるため、電熱ヒーターの力は不要になる。つまり、ブンゼン気化式のものよりも電気代を節約できるのである。これがブンゼン式と比較した長所と欠点の一つ。

もう一つのポイントとしては、燃焼に必要な空気の供給を、モーターでファンを動かして人工的に行っている点である。ブンゼン式と異なり、ガスの量に応じて自動的に空気の量が調整される方式ではないため、不完全燃焼が起きやすいのである。

もちろん、この空気供給量の調整こそが、メーカーの腕の見せどころであり、コロナがこの方式を採用している以上、当然、完全燃焼させる空気供給調整のノウハウは持っているわけであるが、あくまで原理的な、自動的な調整ではなく、人工的な調整になるので、ブンゼン式と比較すると不完全燃焼は起きやすくなる。それに伴い、火力の調整も難しくなるわけである。

これが理解できれば、「燃焼時に発生する臭気は、ブンゼン式やポット式に比べ少ない」などと書かれている油圧送霧化式(ポンプ霧吹方式)に関する解説が誤りであることがわかるだろう。口コミ評判として、油圧送霧化式はブンゼン気化式よりも臭うというものは多く、実際に国民生活センターによるダイニチ、コロナ、トヨトミの同出力石油ファンヒーター3機種の比較テストでも、この方式を使ったコロナのファンヒーターの有害物質の発生量が、他を圧倒していることが示されている。
石油ファンヒーターによる室内空気汚染 - n-20071005_1(PDF)
特に一酸化炭素濃度に関しては、燃焼の安定性を示す直接的な指標である。完全燃焼なら発生しないものだからである。なぜこれだけメーカーによって顕著な数値の差が出たのか、燃焼方式の原理が理解できれば、理由がわかるのである。



ポット式
トヨトミが用いている燃焼方式。原理的な構造としては、この方式が一番単純で、寒冷地用の煙突式大型ストーブなどで、よく用いられている。上記の図を見てもいまいちピンと来ない人はトヨトミのファンヒーターを分解した点火部の画像と合わせて見てみるのがよいだろう。

この画像で言うと、下部にある細い茶色の管から灯油がポタポタ垂れてきて、それを網みたいなマットが受けて、それを白っぽい棒状の電熱ヒーターで直接燃やすという流れである。

これがトヨトミのファンヒーターは不良灯油に強いと言われているゆえんで、ダイニチのブンゼン式のように、小さな器具の中で灯油を気化させるようなことをやっていると、灯油がドロドロだったりすると、すぐ気化器が詰まってしまうわけだが、トヨトミのポット式は、この広い空間に灯油垂らして直接燃やしているので、底に不純物が溜まることはあっても、そうそう詰まることはないのである。

さて、古い灯油でもガンガン使える上、構造が一番単純というのなら、全部このポット式にすればよいじゃないかと考える人もいるだろう。しかし本来のストーブなどで広く使われているポット式というのは致命的な欠点があるのだ。それは排気がものすごく汚いということ。

詳細は下記をご参考いただきたいが、予め空気とガスを混ぜて燃やすようなやり方にしないと、不完全燃焼が起きて、一酸化炭素や窒素酸化物が大量に出てしまうのだ。だからポット式を採用しているストーブは、煙突が付いているのである。
トヨトミのポット式石油ファンヒーターの基幹特許を解読してみる

トヨトミの石油ファンヒーターのポット式はどう違うかというと、ポットの下部ではあくまで灯油をガス化させて空気と混ぜることを役割の主体とし、それをポット中部の助燃装置で青炎の完全燃焼をさせるようにし、さらにその上部でも灯油を垂らして再度燃焼を起こすようにしたことで、火力の幅が出るようにしただけでなく、排気もクリーンにし、室内排気型の石油ファンヒーターとしてポット式を使えるようにしたようである。

ちなみに最初の図のフレームロッドというのは炎検知器のことである。わざわざ簡略図に載せるほど重要な機構とは思えないが、この図を書いた人がどういう意図でそれを載せたのかは不明。


さて、アラジンのファンヒーターはこの3種類の燃焼方式のどれを採用しているのかというと、ブンゼン式を用いているようである。というのは、株式会社千石が、中国の工場で生産している石油ファンヒーターは、ブンゼン式を採用していたナショナル(現パナソニック)の石油ファンヒーターの生産設備を引き継いで作っているもののようなのである。詳細は下記参照。
NATIONALのファンヒーターを新品で頂き、大喜びしていましたが、よくよく調べま... - Yahoo!知恵袋
ベストアンサーの回答の通り、両社の製品の取扱説明書を見れば一目瞭然だ。下記の通り、ファンヒーター各部の部品名称が全く同じ。
ナショナル石油ファンヒーターOH-PV45XDの取扱説明書

アラジン石油ファンヒーターAKF-PV453Nの取扱説明書

なお、ダイニチと同じブンゼン式を採用しているにも関わらず、アラジンのファンヒーターはダイニチよりも消費電力が少ないようである。アラジンのファンヒーターの細かい仕様はわからないが、上記の燃焼方式を理解した上で推測するに、気化器で灯油をガス化する際に電熱ヒーターだけでなく、ファンヒーターの余熱も利用しているということではないかなと思われる。

ヒーターによる電力消費が少ない分、点火時間はダイニチが40秒なのにアラジンは120秒と、コロナやトヨトミの150秒に迫るほど遅い。また、点火時の消費電力もダイニチが390Wなのに対して、アラジンは610Wと、コロナの650Wに近いので、どうも長所と短所がダイニチのものよりコロナのものに近いのかな、というのが一通り調べた印象である。


以上、3種類の燃焼方式の説明をしたので、それぞれの方式の長所と短所をここにまとめておこう。

ブンゼン気化式(ブンゼン式)
採用メーカー:ダイニチ工業、アラジン
長所
点火が早い
燃焼に必要な空気が原理上自動供給されるので、燃焼の安定性が高く、火力の調整がしやすい

短所
灯油をガス化させるのに電気を使い続けるので電気消費量が多い
狭い場所で灯油を気化させるので、詰まって壊れやすい

油圧送霧化式(ポンプ霧吹方式)
採用メーカー:コロナ
長所
起動時しか電熱ヒーターを使わないので電気使用量が少ない

短所
点火が遅い
燃焼に必要な空気量を人工的に調整しなければならないため、燃焼の安定性が悪く排気が汚くなりがち

ポンプ式(トヨトミのファンヒーターで採用されているポンプ式の長所と短所を記載)
採用メーカー:トヨトミ
長所
排気が他方式と比較して最もきれい
電力消費が少ない

短所
点火が遅い


ダイニチ、コロナ、トヨトミ、アラジンの暖房費の比較

石油ファンヒーターに関するメーカー比較で、よく議論されている話題の一つが、どのメーカーの電気代が高いか安いかというものである。結論を書いておくと、ダイニチが高くて、トヨトミ、コロナが安い。ただ、正直、石油ファンヒーターにおいて、この電気代の比較というのは本質的な議論ではないというのが私の見解である。というのも、石油ファンヒーターの燃料費における電気代の占める割合など、微々たるものだからである。

具体的な比較一覧を下記に示そう。各メーカーの比較に使用した機種は、各メーカーそれぞれで一番売れ筋の機種。いずれも木造9畳用、鉄筋コンクリート12畳用の機種である。なので、暖房出力はいずれもだいたい同じ。暖房費の計算に際しては、灯油代は18L1700円、電気代は1kWh29円を使用。これは直近の灯油代、電気代の加重平均相場を使用している。根拠の詳細を知りたい方は下記を参照。
暖房器具の強さと暖房費・電気代と暖房効率の計算に必要な情報まとめ

まずは各メーカーの機種の暖房出力と消費電力は下記の通り。暖房出力は各メーカーほぼ同じくらいであることがわかるかと。寒い部屋を最大出力で暖めている時の暖房費で比較がしたいので、この中の数字で、暖房出力最大のkW(ここでのkWは灯油が発生させる熱量としてのkW)と、燃焼時消費電力が強の時のWを使用して計算をする。
メーカー 人気機種 暖房出力
(最大)(kW)
暖房出力
(最小)(kW)
点火時消費
電力(W)
燃焼時消費
電力(強)(W)
燃焼時消費
電力(弱)(W)
ダイニチ FW-3215S 3.20 0.74 390.0 98.0 52.0
コロナ FH-G3215Y 3.19 0.66 650.0 20.0 9.5
トヨトミ LC-32F 3.19 0.79 320.0 11.0 5.0
アラジン AKF-P359N 3.50 0.81 610.0 21.0 13.0

上記を元に、暖房費を計算した結果が下記。
メーカー 人気機種 1時間の
灯油代(円)
1時間の
電気代(円)
1時間の
燃料費合計(円)
暖房効率(kW/円)
ダイニチ FW-3215S 29.82 2.84 32.66 352.74
コロナ FH-G3215Y 29.72 0.58 30.30 378.97
トヨトミ LC-32F 29.72 0.32 30.04 382.26
アラジン AKF-P359N 32.61 0.61 33.22 379.28

1時間あたりの灯油代がメーカーによって若干異なっているが、これは単純に暖房出力の違いによるものである。灯油の消費量あたりの発生熱量はメーカーによって差はないので、単純に暖房出力が高いものほど、多くの灯油を消費するだけの話である。

注目したいのは、1時間あたりの燃料費合計に占める電気代である。大体30円前後の燃料費の中で、電気代が占める割合は、高々3円にも満たない。暖房出力の差の影響を排した、暖房効率(暖房費1円あたりの発生熱量)で見てみても、そう大きな違いはないことがわかる。

なので、石油ファンヒーターの電気代に関しては、メーカー選びの検討におけるメイン項目ではないと私は考える。部屋を早く暖めるとか、排気が綺麗とか、灯油が入れやすいとか、そういった別項目を主な検討軸として選んだほうがよいかと思う。


ダイニチ、コロナ、トヨトミ、アラジンの主な比較軸での比較まとめ

最後に各メーカーの石油ファンヒーターを主な比較軸で比較した結果をまとめておこうと思う。これまで見てきた項目も含めて、消費者観点で気になる点を中心に一覧でまとめようと思う。

各メーカーともに格安機種から高級機種まであり、機能が異なっていたりするのだが、極力多くの人が選ぶであろう同様のスペックの普及機種同士での比較がわかりやすいだろうということで、各社で一番人気のある木造9畳用の1万円前後の低価格機種を比較のベースにしている。

ただ、排気に関しては、国民生活センター等による比較機種が過去の機種での比較なので、現在の機種では結果が変わる可能性があることは留意していただければと思う。

ダイニチ コロナ トヨトミ アラジン
比較機種(9畳用) FW-3215S FH-G3215Y LC-32F AKF-P359N
実勢価格 10000円前後 10000円前後 10000円前後 10000円前後
燃焼方式 ブンゼン気化式 油圧送霧化式 ポット式 ブンゼン気化式
市場シェア 約50% 約40% 数% 若干量
1時間の暖房費 32.6円 30.3円 30.0円 33.2円
1時間の灯油代 29.8円 29.7円 29.7円 32.6円
1時間の電気代 2.8円 0.5円 0.3円 0.6円
暖房効率 352kW/円 378kW/円 382kW/円 379kW/円
点火時間 40秒 150秒 150秒 120秒
騒音 35dB 35dB 34dB 37dB
不良灯油への強さ × × ×
保証期間 3年 3年 3年 1年
給油時に手が汚れない × × ×
排気のクリーンさ 不明

上記の通り、各社一番売れているのは実勢価格1万円前後の木造9畳用モデルである。暖房出力自体はほぼ変わらないのでこちらの比較一覧には載せていない。

まず、シェアで選ぶならダイニチかコロナという判断になるであろう。暖房費用で選ぶなら、暖房効率と書かれた、1円あたりの発生熱量が高いものがお得ということになるので、トヨトミかコロナという選択肢になる。が、1時間あたりの暖房費として見た場合、各社対して差がないことがわかるだろう。各社がカタログで書いたり、ネット上で比較されていたりする電気代の比較など、灯油代に比べれば、大した金額ではないのである。

石油ファンヒーターの最大の欠点であるスイッチを付けてからの点火時間の遅さに関しては、一番マシなのはダイニチである。この観点で選ぶならダイニチ一択になるであろう。

ちなみにコロナはカタログで7秒点火(秒速点火機能)を主張していたりするのだが、それはあくまで待機中も毎時100Wもの無駄な電力を使い続け、大きな気化筒を暖め続ける機能になるので、同条件で比較するなら秒速点火機能を使わない場合の150秒の方で解釈すべきであろう。秒速点火機能を使うなら、コロナが自社製品のメリットとして主張している電気代の安さがなくなってしまうのだから。ちなみに秒速点火機能使用時の毎時100Wというのは、ダイニチの最大燃焼時の使用電力とほぼ同じである。スイッチOFF時にそんな機能を使うのがどれだけ無駄なのかがわかるかと。

騒音に関しては各社ほぼ変わらないことがわかるであろう。コロナが採用している油圧送霧化式は、騒音が少ないような記載をしているサイトもあるが、実際の数値としてはどこもほぼ変わらない。油圧送霧化式は、燃焼音が柔かくても、混合空気生成のためのファンと温風ファンの2つを使用することになるので、結果として他方式と騒音の大きさが変わらないのであろう。

酸化して質の落ちた去年の灯油が使えるのはトヨトミだけである。これはガラスマットに垂らした灯油をヒーターで直接温めるという仕組みの、トヨトミの採用しているポット式が一番不純物に強いからである。反対に、構造上一番不良灯油に弱いのは、狭い気化器で灯油をガス状にするダイニチやアラジンが採用しているブンゼン気化式である。ただ、保証期間を見る限り、一番壊れやすいのはアラジンの石油ファンヒーターなのではないかと推測できる。ここだけ保証期間が1年しかないということで、自ら壊れやすいですと言っているようなものである。

この中でコロナを選択するとしたら、一番のメリットは電気代の安さなどではなく、給油時の利便性にあると言えるだろう。灯油の給油を経験した方は知っていると思うが、普通はタンクの蓋が煩わしくて、手や蓋を置いた床が汚れるのである。ところがコロナの採用している「よごれま栓」という手も床も汚さずに給油ができるタンク開閉機構があって、これの評判がかなりよいのである。これは見たほうがわかりやすいと思うので、参考動画を下記に置いておこう。


最後に排気のクリーンさに関して。これは国民生活センターが行った2007年時点の各メーカーの同暖房出力(9畳用)の機種で行ったものがソースになるので、現在の機種でも同様の結果なのかはわからない。ただ、この結果を見る限りでは、トヨトミの排気が一番綺麗で、コロナの排気はダントツに汚い。さらに東京都の生活文化スポーツ局が2008年に実施した同種の調査でも、メーカー名の記載はないものの、テストした3機種の石油ファンヒーターの中で著しく排気の汚い機種が1機種あった。以上を踏まえると、特に小さな子供がいたり、喘息の方がいるような家庭では、コロナの機種は真っ先に避けるべきではないかと思われる。


以上、各社の比較の観点をまとめてみたが、結論として、おすすめはダイニチかトヨトミだ。石油ファンヒーターを過去に使っていた経験で言うと、朝起きて寒い寒い言いながらファンヒーターのスイッチを付けるが、なかなか温風が来ないというアレが一番不快な時間である。石油ファンヒーターの最大の欠点だと思う。その欠点が一番マシというそれだけで、ダイニチを選ぶ十分な理由になるであろう。またブンゼン式の特性上、火力を変えても不完全燃焼が少ないのも魅力と言えよう。

後発参入でシェアは少ないが、スペック自体はトヨトミの石油ファンヒーターの優秀さが際立っていることもわかる。排気は一番きれいだし、去年の灯油も使えるし、暖房効率は一番高く、騒音も他より僅かに小さい。点火の待ち時間を気にしないなら、トヨトミは最有力選択肢になるのではなかろうか。

逆に私なら選択をしないというのはコロナとアラジン。コロナに関しては「よごれま栓」の便利さには魅力を感じるが、ただでさえ排気が汚いことが大きなデメリットとして挙げられる石油ファンヒーターの中で、さらに排気がダントツで汚いという結果が出ていることで、個人的な印象は最悪である。また、秒速点火という機能も、カタログ上の点火時間を短く見せるためのごまかしのための機能という印象しかない。ダイニチの最大燃焼時と同じだけの電力を、待機時間中ずっと使い続ける機能とかどう考えてもおかしいだろ。

アラジンに関しては、シェアがダントツに少ないのと、ナショナル(現パナソニック)石油ファンヒーターの技術をベースにしているとはいえ、他の国内生産の3社と異なり中国生産品であるということ、そして保証期間が4社の中で唯一1年しかないなど、製品としての信頼性に疑問を感じる点がいくつもあることと、他社と比べてメリットを感じるポイントが一つもないので、このメーカーをわざわざ選ぶ理由が何一つないというのが、一通り調べた限りでの率直な結論である。

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コロナにはカタログにないストーブのRXシリーズやファンヒーターのGシリーズがあるらしい

コロナの石油ストーブや石油ファンヒーターの売れ筋商品をネットで見た後に、コロナの公式サイトのカタログを見ると、おかしなことに気付く人もおかしなことに気付く人も多いのではなかろうか。

例えば、私が見ている現時点でのコロナ製石油ファンヒーターの一番の売れ筋機種はFH-G3215Yで、コロナ製石油ストーブの一番の売れ筋機種はRX-2215Yなのであるが、下記の通り、カタログにこれらの機種名の記載はないことがわかる。
石油ファンヒーターFH-G3215Yの暖房出力は3.19-0.66kWで木造9畳用、石油ストーブRX-2215Yの暖房出力は2.24kWで木造6畳用となっているが、カタログに同スペックのものはなく、これらファンヒーターのGシリーズやストーブのRXシリーズは、暖房出力を見ても、カタログ記載機種より少しだけスペックが低くなっていることがわかる。

これはどういうことなのか?いろいろ調べた結果、一番わかりやすく事情の説明がされていたのは下記のページ。
コロナの石油ストーブについて質問です。メーカーカタログにはSX... - Yahoo!知恵袋
複数の方が寄せている情報によると、コロナには、正規品の一部の機能を取り除いたり、耐久性を削ったバーゲン用のシリーズがあるとのこと。家電量販店のベテラン販売員の方がコロナの担当者に確認したところ、これらの機種は、リアル店舗だとホームセンターなどにしか置いておらず、家電量販店にはない機種のようだ。

機能的な違いとしては、石油ストーブのRXシリーズはSXシリーズのバーゲン用下位機種で、SXシリーズにはある再燃焼部がないため、弱火時に燃焼のバランスが崩れて灯油の刺激臭が発生するとのこと。

ここから推測するに、バーゲン用機種に関しては付加価値機能を取り除いたものになっていると推測される。とすると、ファンヒーターのGシリーズがどういうものなのかもある程度推測できることになる。

FH-G3215Yの画像は下記。
コロナのカタログに載っているファンヒーターの形は下記の通り。
これを踏まえると、形の類似性から、GシリーズはSTシリーズのバーゲン用下位機種であることがわかるだろう。STシリーズにあって、Gシリーズにない機能を、暖房出力の近いFH-ST3315YとFH-G3214Yを例に取って、取扱説明書をベースに比較をしていくと、STシリーズにあって、Gシリーズにない機能は、
・秒速タイマー(秒速点火の開始時間をセットする機能。秒速点火機能自体はGシリーズにもあるが、それは機能中ずっと100Wの電力がかかる)
・火力セレクト(3段階の火力調整ができる)
・エコモード(最大火力を約40%抑え、設定温度が20度に固定される)
・お知らせサインの消灯機能(寝ているときに眩しくないように表示を消し、自動消火や給油予告をブザーで知らせる機能)

カタログと、ネットの販売サイトの商品説明をベースに見ていったSTシリーズにあって、Gシリーズにない機能は、
光る延長お知らせリング
ecoモード
クリーン消火
給油お知らせ機能
になる。Gシリーズでも主要機能はそろっていそうな印象。


トヨトミのポット式石油ファンヒーターの基幹特許を解読してみる

石油ファンヒーターの選び方を調査していたら、まさかここまで調べることになるとは。

そもそものきっかけは、石油ファンヒーターはどこのメーカーのを選べばいいのかを判断する重要なポイントである燃焼方式の違いを調査したところから始まっている。ダイニチのブンゼン気化式、コロナの油圧送霧化式、そしてトヨトミのポンプ式の3種類のことである。

ブンゼン気化式は、要はガスコンロと同じことをやっていて、油圧送霧化式は、灯油をガス化させるのにブンゼン気化式のように電熱ヒーターを使い続けなくてよいように工夫したもの、ポンプ式は灯油をポタポタ垂らしたものを直接ヒーターで燃やす原理的には一番単純な構造、というところまでは理解できたのだが、寒冷地用の煙突付きストーブの主力方式である元来のポンプ式と、それを石油ファンヒーターに唯一転用することができたトヨトミのポンプ式の何が違うのかについて、詳しく調べた資料はネット上では見つからなかった。そもそもポンプ式自体の説明をあまり多く見かけないのである。

そこで、「灯油ポタポタを直接燃やす」程度のポンプ式の説明では到底納得出来ない私は、トヨトミのポット式石油ファンヒーターに関する特許文献を直接調べ、解読することで、そもそものポット式の特徴や長所と短所、石油ストーブで使われている従来のポット式と、トヨトミ石油ファンヒーターのポット式の違いを、納得行くまで調べようと思った次第である。


トヨトミの石油ファンヒーターに関するそれらしい特許を一つ一つ見ていったところ、どうも基幹技術となっている特許は下記のようだ。特許庁のページだと個別の特許ページのURLを持っていないようなので、下記で代用する。
ポット式石油燃焼器の構造
青炎燃焼器に関する補足として下記も紹介しておく。
青炎ポット式石油燃焼器

見てもらえばわかるが、数字と専門用語だらけで、門外漢にはさっぱりわからない。私が日本語文書なのにわざわざ「解読」と書いた理由もお分かりいただけるだろう。ただ、従来技術やその課題と解決についても記載があるようなので、この文書が解読できればポット式という燃焼方式について理解する当初の目的は達成できそうだ。


まずは、用語の説明から。この文書を理解するにあたって、絶対に理解しなければならないのが、一次空気と二次空気、一次燃焼と二次燃焼、予混合燃焼と拡散燃焼という3組の概念である。何が1で何が2なんだ、と私も含めた一般人は思うわけであるが、これは、基本となるブンゼン式ガスバーナー、つまりはガスコンロの燃焼の原理を抑えると容易に理解できるのではないかと思う。

下記のサイトの画像を元に説明をすることにしよう。
ガスこんろ(がすこんろ)とは - コトバンク
まず、ガスはそれだけで燃えることができないのはご存じの方も多いだろう。ものが燃えるためには酸素、つまりは空気が必要なのだ。この空気をガスに供給するタイミングが2つ存在するのである。一つはガスを燃やす前、もう一つはガスを燃やすときだ。

上記の画像のブンゼン式ガスバーナーは、ノズルからガスが出るタイミングで、その噴出の勢いを使って、管の隙間から適切な量の空気を取り込んでいる。この空気を一次空気と呼ぶのである。ここでガスと一次空気による混合気体が作られることにより、火を付ければいつでも燃焼できる状態が出来上がったわけである。この状態で燃やすのが予混合燃焼。予めガスと空気を混合して燃焼させるから予混合燃焼というわけだ。

では予め空気を混ぜずに燃やそうとするとどうなるのか。こうなる。
(画像は「ブンゼンバーナー - Wikipedia」より)
上記の画像の例で言うと、一番右の4番が一次空気を取り込んで混合気を作って予混合燃焼をしている状態。一番左の1番は、一次空気を取り込まずに燃えている状態だ。この2つを理科の実験で見たことのある人も多いだろう。

では一番左のはどこから空気を取り込んで燃えているのかというと、ろうそくや焚き火などと同様、燃えるときに外から空気を取り込んでいるのである。これが拡散燃焼。ガスが外に拡散する際に外の空気と混ざって燃焼するから拡散燃焼。そしてこの拡散燃焼時に外から取り込む空気が二次空気である。往々にしてこの燃え方は、空気の量が足りなくなるので不完全燃焼が起きやすく、炎の温度も低い。

じゃあこのままだと部屋の中に不完全燃焼による有害物質がたくさん充満してしまうね、ということで、それを減らすために再度空気を入れて燃やすのが二次燃焼という方法だ。二度燃やして有害物質を減らしているわけだ。

以上、ここまでをまとめると下記の通り。
一次空気:燃焼前の段階で予めガスに混ぜておく空気
二次空気:燃焼時にガスと混ざる空気
予混合燃焼:燃焼前に混合気を作って燃えること
拡散燃焼:燃焼時にガスが拡散しながら空気と混ざって燃えること
一次燃焼:いわゆる普通の燃焼。最初の燃焼
二次燃焼:一度燃焼させた燃焼ガスに、再度空気を供給して燃やすこと。不完全燃焼による有害物質を減らすことができる


これがわかれば、特許資料を読み込むのに必要な武器の貯蔵は十分なはずなので、満を持して読み込んでいくことにしよう。

まずは従来のポット式、ポット式ストーブはどういうものだったのかということについて。この特許資料を読むに、元来のポット式は拡散燃焼による黄色い炎を上げて燃えるもののようである。たしかに、よくよく考えれば、このポット式のやっていることって、昔の行灯みたいに、油皿に火を付けて、もわもわ黄色い火が立ち上っている状態とあまり変わらないわけだから、そうなるだろうね。

で、従来のポット式の課題としては、不完全燃焼が起きやすい黄色い火の拡散燃焼になるので、すすなどの有害物質が発生しやすくて、煙突が必要になると。たしかに、調べた限り小型のストーブはみんな芯式ストーブで、このポット式ストーブに関しては、煙突付けるのが前提の寒冷地用ストーブばかりだったな。つまり従来のポット式ストーブは排気が汚いという課題があったということだね。

ただ、ポット式で青炎を作る技術はトヨトミによるものではなく、従来からあったようだ。これはポットの灯油ポタポタのところで直接灯油を燃やしてしまうのではなく、そこでのヒーターは灯油をガス化させることにとどめ、それに空気を混ぜて、ポット上部の助燃装置で予混合燃焼させるというやり方。ただし、点火・消火時に燃焼のバランスが崩れるので、やはり排気が悪く、煙突が必要という課題は残ったまま。

で、トヨトミはどうしたかというと、下記のようにしたと。ちょっと元ページの画像は番号ばかりで見にくいので、主要なものに名前を付けてみた。
ポット式石油燃焼器の構造

この画像の下の方にある給油パイプと点火ヒーターは、ポンプ式の基本的な機構なのでまあいいだろう。灯油を垂らして、それを点火ヒーターで温めると。ただ、細かい記載はないのだが、読む限りはここで火を作るというよりは、あくまで灯油をガス化させ、空気を混ぜて混合気を作るのが、このポット下部での主な役割であり、燃焼の主体はポット中部にある助燃装置のようである。この部分で混合気を予混合燃焼させ、完全燃焼の青炎を作るというわけだ。

で、ここまではそれ以前の技術でもあったのだが、トヨトミの場合は、その助燃装置の上に気化皿を用意して、そっちにも送油管から灯油を垂らし、こっちは黄炎の拡散燃焼をさせるとのこと。これにより一次燃焼と二次燃焼を発生させて、火力に応じて一次燃焼だけのときと、一次燃焼、二次燃焼両方を使う時を使い分けることで、火力の幅を持たせるとともに、点火時、消火時の不完全燃焼をなくすことに成功したとのこと。


ちょっと私自身も、何度も読み込んだ上でも完全に理解できたわけではないのだが、ポイントとして、

・従来のポット式ストーブは拡散燃焼の黄炎で排気が汚いので煙突が必要になる
・それを改良したものとして、ポット下部では混合気を作って、上部の助燃装置で青炎の予混合燃焼をさせるものができた
・さらにトヨトミが改良した本特許では、助燃装置の更に上に拡散燃焼をさせる気化皿と送油管を置き、一次燃焼だけでなく、二次燃焼もさせることで、火力の調整幅を増やし、排気も綺麗にすることで、ファンヒーターとしてポット式機構を使うことに成功した

ということではないかと思う。ちなみにトヨトミの石油ファンヒーターの排気は、主要3社の中で一番きれいなことが、国民生活センターの検証により示されている。下記を参照。
石油ファンヒーターによる室内空気汚染 - n-20071005_1(PDF)