石油ストーブのシェアはコロナとトヨトミで二分されている

石油ストーブのシェアに関して、まともなソースにたどり着かず、中にはトヨトミが1位とかいう間違った情報まであるので、ここにきちんと情報をまとめておこうと思う。

まずはネット上の信頼性のあるソースから。

株式会社トヨトミ|企業情報 | トヨトミはこんな会社 | Network
いわゆる石油ストーブというのは、家庭用の石油ポータブルストーブのことをイメージされる方がほとんどだと思うので、その文脈で話を進めると、上記トヨトミのページで国内市場におけるトヨトミの石油ポータブルストーブのシェアは約40%との記載がある。

コロナ トップシェア狙い、集約合理化 今町コロナ増築で、石油ストーブ一貫生産
2015年5月20日に越後ジャーナルに掲載された記事にて、コロナ社長の「ポータブル石油ストーブ(反射式石油ストーブ)には安定した国内需要がある。さらなるシェアアップを狙い、ダントツのトップシェアに」という発言が載っている。これを踏まえると、
・現在のトップシェアはコロナ(もしコロナがシェア2位ならシェア逆転に類する言葉を使うはず)
・ただし石油ストーブシェア2位のトヨトミとは拮抗している状態(だからダントツのトップシェアにという発言になる)
・トヨトミがシェア約40%であることを踏まえると、コロナもシェア40%台で、2社で家庭用ポータブル石油ストーブのシェアは8割を超えている状態
ということが言えるであろう。

もう一つ、今度は「家電流通データ総覧」発行元のリック推定による石油ストーブのシェアと、国内出荷台数推移から算出される、各メーカーの出荷台数推移を見てみよう。ちなみにリックは2008年以降(家電流通データ総覧2009以降)はメーカー別シェアの項目を記載しなくなったので、最新のデータは2007年度のものまでになる。

メーカー別
シェア
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
コロナ 36% 36% 38% 39% 40% 42% 42%
トヨトミ 32% 32% 33% 33% 33% 34% 35%
その他 32% 32% 29% 28% 27% 24% 23%
合計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%

メーカー別
出荷台数
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
コロナ 69.2万台 56.1万台 54.6万台 53.9万台 62.2万台 60.8万台 60.9万台
トヨトミ 61.5万台 49.9万台 47.5万台 45.6万台 51.3万台 49.2万台 50.8万台
その他 61.5万台 49.9万台 41.7万台 38.7万台 42.0万台 34.8万台 33.4万台
合計 192.2万台 155.8万台 143.8万台 138.2万台 155.6万台 144.8万台 145.0万台

ということで、2007年度の時点でコロナ42%、トヨトミ35%であったことを踏まえると、シェア推移の流れから、現在はさらにその他の部分のシェアが低くなっていることが推測できるであろう。

ちなみに余談であるが、2005年度までは家電メーカーであるシャープの石油ストーブのシェアが6%あった。ただ、どうもシャープは2000年代のどこかのタイミングで石油ストーブ市場から撤退をしているようである。石油ファンヒーター市場から2007年春に撤退したという情報はネット上でも見つかるのだが、石油ストーブに関する撤退情報は見つけることができなかった。ただ、下記のページを踏まえると、
暖房機(加湿セラミックファンヒーター/セラミックファンヒーター/ホットカーペット/石油ファンヒーター/FF式石暖/石油ストーブ)│取扱説明書ダウンロードサービス:シャープ
石油ファンヒーターは2005年8月まで発売機種があったのに対して、石油ストーブは2000年8月が最後の発売年月になっているため、石油ファンヒーターよりも早く撤退をしているという推測が成り立つ。ちなみに楽天やアマゾンなどの大手ECサイトでもシャープ製石油ストーブの販売はないので、ここからも既に販売中止になっていることが推測できる。

以上、これらを踏まえると、2007年時点よりもさらにコロナとトヨトミのポータブル石油ストーブ市場の寡占化が進んでいることはほぼ間違いないと言えるだろう。


ちなみに石油ストーブの選び方に関して少々言及しておくと、ファンヒーターと比べると検討項目はかなり少なくなる。端的に言うと、給油時の手や床の汚れなさを重視するならコロナ、燃焼時の空気の綺麗さを重視するならトヨトミという選択になる。

石油ストーブ自体はいろいろな種類があって、燃焼方式なら芯式とポット式、熱の伝播における方式なら反射式と対流式の2つがあるのだが、ポット式は煙突付きの寒冷地用ストーブで使われる方式であり、対流式は学校などで使われる円筒状の大型ストーブのことなので、いわゆる家庭で使われる後ろに鏡みたいなやつ(反射板という)がついた小型のストーブ、ポータブル石油ストーブに関しては、反射型芯式ストーブしかないのである。

トヨトミの石油ストーブの特徴は2回燃やすことで灯油の不完全燃焼を大幅に減らし、排気を綺麗にするダブルクリーンという特許を取得している機構にある。詳細は下記参照。



一方のコロナは「よごれま栓」という手や床などを汚さない給油機構の利便性に特徴がある。灯油まみれの蓋に触らず給油できるというものなのだが、これも見たほうが早いと思うので動画を載せておく。


以上、給油時の利便性を選ぶか、排気の綺麗さを選ぶかでコロナかトヨトミを選べばよいかと思う。なお、灯油の発生熱量は、メーカーや燃焼方式によらず一定なので、どちらのメーカーを選んでも暖房費、燃料代の違いはない。暖房出力に比例して灯油の消費量が変わるというそれだけである。


ちなみに暖房機器としての暖房効率の良さとしては、石油ストーブはエアコンに次ぐものである。
暖房器具の強さと暖房費・電気代と暖房効率を徹底比較した結果まとめ
これは電気やガスよりも灯油のほうが安い(1円あたりの発生熱量が多い)のと、石油ストーブは石油ファンヒーターと異なり電気を使用しないので、その分ファンヒーターより安く上がるという理由によるものである。ちなみにエアコンは電気を熱に変えるのではなく、熱ポンプという仕組みを使って、外部から熱を持ってきているため、他の方式よりも異様に暖房効率がよいのである。

こうして見ると、主な暖房機器の中で唯一電気を全く使用しないのが石油ストーブなので、停電等の災害に強く、野外でも使用できることがわかる。これは石油ストーブの大きな長所と言えるだろう。