暖房器具の強さと暖房費・電気代と暖房効率の計算に必要な情報まとめ

暖房器具の強さと暖房費・電気代と暖房効率を徹底比較した結果まとめ
の記事で、暖房の強さや暖房効率などを算出したが、詳細な計算手順を知りたいという人がいるかも知れないので、手順をここに公開しようと思う。

上記の記事では電気代やガス代・灯油代の平均的な価格をベースにして、楽天・アマゾンなどのネット上で一番売れている各暖房機種の性能をベースにポジショニングマップを作ったので、個別地域の個別機種での暖房効率や暖房の強さを知りたい人は計算方法を知っておく必要があるだろう。

また、エアコンが暖房効率最強とか嘘ついてんじゃねーよ、ステマか?みたいな疑り深い人も、計算方法を知ることで、自ら検証することができるだろう。ちなみに私自身、自分で計算してみるまではエアコンが一番暖房効率が高いという事実を信じることができなかった。そして今でも個人的には面倒事がなくて、即暖性の高いガスファンヒーター推しである。

ということで、本題の各暖房器具の暖房代を求めるのに必要な情報と計算方法をご紹介していこうと思う。


電気代や都市ガス代、プロパンガス代や灯油価格に関する情報まとめ

暖房費を算出するには、まずこれらがわからないと始まらないので、各資源の料金を求めるのに必要なサイトを紹介していくことにしよう。


暖房機器の電気料金を求めるのに必要な情報まとめ

家電製品のカタログによくある電気料金の算出は「新電力料金目安単価」の27円/kWhを元にして行われている。これは2014年4月28日以降の基準として全国家庭電気製品公正取引協議会が設定したもの。詳細は下記。
電気料金の値上げを受けて、カタログの目安価格も引き上げ - 家電Watch
ただ、残念なことに、この数値、全く現在の電気料金の実態が反映されていない。例えば本記事記載の2015年12月時点の東京電力の電力単価は29.93円/kWhであり、関西電力の電力単価は33.32円/kWhである。

これでは全く納得感のある数値の計算ができないので、当サイトでは以下の手順で電気料金単価を求めることにした。

まずは全国の電力会社の平均的な家庭の電気使用量における電力量料金単価を確認する。その後、各電力会社の一般家庭の契約数(=電灯口数)を元に電力量料金単価の加重平均を取るという方法である。

平均的な家庭の冬の電力使用量がどれくらいになるのか、いくつか根拠となる数値はあるのだが、今回暖房の料金計算を行うので、冬の電力使用量で計算を行う必要がある。その場合の妥当なデータは、下記の総務省統計局による「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 月報 月次 2014年12月」であると判断した。
統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103
世帯平均電力使用量(kWh) 2012年 2013年 2014年
1月 558.6 567.9 561.2
2月 596.9 578.7 575.9
3月 561.4 543.0 560.6
4月 512.4 456.7 475.1
5月 433.4 410.4 396.6
6月 355.1 344.3 342.8
7月 342.3 353.6 332.3
8月 412.7 424.1 392.0
9月 439.5 444.0 391.8
10月 380.6 373.9 352.3
11月 364.8 371.7 349.2
12月 444.1 425.8 408.1
12,1,2月の平均値 533.2 524.1 515.1

以上により、2012年~2014年における1月、2月、12月の冬の電力使用量の平均である524kWhを用いて、各電力会社の電力量料金単価を見ていくことにする。


下記の電気事業連合会のサイトによると、全国には9つの電力会社があることがわかる。
電力会社 - 電力会社・電力施設情報 | 電気事業連合会
それぞれの250kWh~300kWhの電力量料金単価を見ていこう。

従量電灯など基本的なご契約の単価表(電気供給約款) - 北海道電力
北海道電力の一般家庭が利用する従量電灯Bプランにおける280kWhをこえる電力量料金は33.37円/kWh。

電気料金単価一覧 |東北電力
東北電力の一般家庭が利用する従量電灯Bプランにおける300kWhをこえる電力量料金は28.75円/kWh。

従量電灯B・C|東京電力
東京電力の一般家庭が利用する従量電灯Bプランにおける300kWhをこえる電力量料金は29.93円/kWh。

中部電力|従量電灯A・B・C - 基本メニュー(電灯契約)
中部電力の一般家庭が利用する従量電灯Bプランにおける300kWhをこえる電力量料金は27.97円/kWh。

北陸電力 ご家庭でお使いいただくお客さま(電気料金単価)
北陸電力の一般家庭が利用する従量電灯Bプランにおける300kWhをこえる電力量料金は22.98円/kWh。

従量電灯A | 主な電気料金メニュー [関西電力]
関西電力の一般家庭が利用する従量電灯Aプランにおける300kWhをこえる電力量料金は33.32円/kWh。なお、関西電力は一般家庭用の電気料金プランは従量電灯Aプランであり、従量電灯Bプランは商店・飲食店向けの大容量プランになっている。

電気料金単価表(電灯)|電気料金単価表│中国電力
中国電力の一般家庭が利用する従量電灯Aプランにおける300kWhをこえる電力量料金は28.98円/kWh。なお、中国電力も一般家庭用の電気料金プランは従量電灯Aプランであり、従量電灯Bプランは商店・飲食店向けの大容量プランになっている。

従量電灯A・B-四国電力-
四国電力の一般家庭が利用する従量電灯Aプランにおける300kWhをこえる電力量料金は29.95円/kWh。なお、四国電力も一般家庭用の電気料金プランは従量電灯Aプランであり、従量電灯Bプランは商店・飲食店向けの大容量プランになっている。

九州電力 供給約款/従量電灯
九州電力の一般家庭が利用する従量電灯Bプランにおける300kWhをこえる電力量料金は25.57円/kWh。

従量電灯:ご家庭向け電気料金メニュー|沖縄電力
沖縄電力の一般家庭が利用する従量電灯プランにおける300kWhをこえる電力量料金は29.87円/kWh。

では各電力会社の契約口数がどうなっているかというと、下記のサイトが参考になるだろう。
電気事業60年の統計 - 電力データ | 電気事業連合会
上記2010年時点の契約口数になるが、現在もそう大きく変わるものではないだろう。結論をまとめると下記のようになり、各電力会社の電灯口数を考慮した加重平均を算出すると、29.43円/kWhになる。
会社別 電灯口数(2010年) 1kWhの電気料金 電灯口数×料金
北海道 3,589,290 33.37 119,774,607
東北 6,548,109 28.75 188,258,134
東京 26,558,243 29.93 794,888,213
中部 9,293,659 27.97 259,943,642
北陸 1,842,250 22.98 42,334,905
関西 12,393,599 33.32 412,954,719
中国 4,697,827 25.52 119,888,545
四国 2,478,031 29.95 74,217,028
九州 7,584,753 25.57 193,942,134
沖縄 779,240 29.87 23,275,899
10社計 75,765,001 29.43 2,229,477,826

ということで、本サイトでの暖房料金の計算では1kWhあたり29円を使用することにする。


ガス暖房機器のガス料金を求めるのに必要な情報まとめ

続いてガス料金を求めるのに必要な情報をまとめる。ガスに関しては都市ガスとプロパンガス(LPガス)の2種類があるので、まずは都市ガスの料金を求めようと思う。

都市ガスに関しても基本的には電気料金を求めた方法と同様のアプローチを取る。すなわち、大手ガス会社の一般家庭の使用量に応じた単位料金を求め、各社の契約家庭数に応じた加重平均を求めるという方法である。

都市ガスの販売会社は東京ガス、大阪ガス、東邦ガス(愛知、岐阜、三重が営業エリア)、西部ガス(福岡、長崎、熊本が営業エリア)の4社があり、これらは大手ガス4社と呼ばれている。下記サイトの本記事執筆時の最新データである2015年10月の家庭用お客さま数の数値を加重平均計算時の数値として用いる。
都市ガス販売量速報|日本ガス協会

続いて大手ガス4社のガス料金について。大手ガス4社の都市ガスに関しては、いずれも1m3(1立方メートル)で単位料金が設定されており、1立方メートルあたりの発熱量は45MJに統一されている(一部異なる地域があるものの、多くの地域で45MJ/m3が使用されているため当サイトでの計算ではこれを用いることにする)。

大手ガス4社の平均ガス使用量は下記の通り。
一般家庭での平均使用量を教えてください。 | ご家庭のお客さま向けFAQ | 東京ガス
最新の料金表(一般料金) | 大阪ガス
東邦ガス | 原料費調整制度に基づく平成27年3月検針分のガス料金について - 2014年度(プレスリリース)
ニュースリリース|西部ガス
上記によると東京ガスは32m3、大阪ガスは33m3、東邦ガスは31m3、西部ガスは23m3。お客様数を考慮した加重平均を取ると31.76m3の使用量における単位料金を使用するのが妥当。

大手ガス4社の単位ガス料金は以下のとおり。
ガス料金表(家庭用/業務用・工業用 共通)|東京ガス株式会社
最新の料金表(一般料金) | 大阪ガス
東邦ガス | 各月の適用料金 - ガス料金
一般料金|ガス料金メニュー|ガス料金について|ご家庭のお客さま|西部ガス
上記によると使用量32m3における1m3あたりの2015年12月検針分のガス料金は、東京ガスが129.21円、大阪ガスが138.43円、東邦ガスが144.43円、西部ガスが190.70円。

これらを踏まえて大手ガス4社のお客様数の加重平均を取ると、1m3あたりのガス料金は137.08円となる。
会社別家庭用お客様数 お客様数(2015年) 45MJ(1m3)料金(2015/12検針分) お客様数×料金
東京ガス 10380 129.21 1341199.8
大阪ガス 6871 138.43 951152.53
東邦ガス 2290 144.43 330744.7
西部ガス 1045 190.35 198915.75
20586 137.08 2822012.78

よって、当サイトでは1m3=45MJあたりのガス料金を137円として計算する。


続いてプロパンガスの料金や単位熱量をどう置くかについてだが、プロパンガスはちょっと難しい。というのは、調べた限り、どうも地域別に業者がかなり細かく分かれているようで、料金も業者によって大きく異なるようなのだ。さらにたちが悪いのが、LPガス業者によるステマ(ステルスマーケティング)や、○○協会などといった公共団体風の名前を騙って特定のLPガス業者に誘導するような検索結果を検索上位に出すような検索エンジン汚染が起きているようなのだ。

大手不在で料金もバラバラ、検索エンジンの結果は特定業者による広告情報ばかりという状況なので、信頼性の高い情報源を吟味して選ばなければならないというのが最大の課題となる。

まず、単位熱量(1m3あたりの熱量)については経済産業省の下記のページにある99MJ/m3を採用するのがよいだろう。
経済産業省 ~LPガスを安全に使うために、LPガスの基礎知識~

次にLPガスの料金に関してだが、先述の通り、LPガスの検索結果は汚染が進んでおり、闇が多いため、極力広告色の薄いページをソースとして用いるのが妥当かと。広告を確認できず、ユーザー投稿ベースの情報が記載されている下記のページの情報を用いるのがベターと判断した。
プロパンガス価格 口コミサイト propane DB - あなたの街の一番安い会社はココ!
これによると、1m3あたりのプロパンガスの平均単価は585円とのことで、プロパンガスの単位料金の計算には585円を当サイトでは使用することにする。


石油暖房機器の灯油料金を求めるのに必要な情報まとめ

最後に石油ストーブや石油ファンヒーターなど、石油暖房機器の燃料費を求めるのに必要な情報をここにまとめておくことにしよう。

まずは石油暖房機機で使用する灯油の発生熱量から。これは、JXホールディングス株式会社、東燃ゼネラル石油株式会社、出光興産株式会社、昭和シェル石油株式会社、コスモ石油株式会社など、日本の主たる石油販売会社が集まって作った業界団体である石油連盟のサイトに記載されている1Lあたりの発生熱量36.49MJという数値を使うのが妥当かと。
石油連盟 | 統計情報 | 換算係数一覧

次に料金であるが、これは全国で料金がバラバラなのであるが、下記のサイトの数値を使うのがわかりやすいかなと。一般的に灯油は店頭で買うのではなく、配達してもらって買うものというのが私の認識なので、配達販売での価格を用い、期間はサイト内での最大レンジの2009年06月01日~2015年12月07日の結果で取得したものが下記。
灯油(配達販売)価格(全国平均) 統計期間指定(2009年06月01日~2015年12月07日)|全国・都道府県別ガソリン・灯油価格最新情報(毎週更新)
統計期間 2009年06月01日~2015年12月07日
最高価格 2,075 円(2014年07月22日)
最低価格 1,281 円(2009年06月01日)
ということで平均は1678円になるので、当サイトでは灯油18Lの価格として1700円で計算をすることにする。


暖房機器の暖房費・電気代の具体的な計算方法まとめ

以上をまとめた基礎データが下記となる。灯油の単位熱量は計算の都合上18Lあたりの発生熱量となっている。
基礎データ 単位金額(円) 単位熱量(MJ) 1円あたりの熱量(kJ/円)
灯油価格(配達)(円/18L) 1700 656.8 386.36
電気代(円/kWh) 29 3.6 124.14
都市ガス代(円/m3) 137 45.0 328.47
プロパンガス代(円/m3) 585 99.0 169.23

この基礎データを求めるとあとは簡単で、エアコンを除く電気・ガス・石油暖房機器に関しては、発生熱量=燃料消費量となっているので、暖房出力を単位熱量で割って単位金額を掛ければ暖房費を出すことができる。

例えば、電気代を考慮せずに済むので一番簡単な石油ストーブの例を出そう。楽天やアマゾンなどネット上の主なショッピングサイトを複数確認した限りで一番売れている石油ストーブの暖房出力は2.24kWとなっていたので、この数値を使って1時間の暖房費を計算してみよう。

kWとはkJ/s、つまり1秒あたりのkJのことなので、まずはこの石油ストーブが1時間で発生させる熱量を求めよう。2.24kW×3600秒(=1時間の秒数) = 8064kJ = 8.064MJが1時間の発生熱量。灯油の価格は18Lの658.8MJあたり1700円なので、8.064MJ/656.8MJ×1700円=20.87円。1円あたりの熱量は1時間の発生熱量の8064kJを20.87円(細かくは20.87147164円)で割ってあげれば386.36kJ/円と出る。

石油ファンヒーターもガスファンヒーターも、上記と同様の方法で算出することができる。1時間あたりの暖房費の部分で電気代に関しても計算して加算すればよいだけだ。その結果としてまとめたものが下記になる。

暖房名 暖房の強さ
(kW)
暖房効率
(kW/円)
1時間の暖房費
(円/時間)
電気使用量
(W)
ガスファンヒーター(都市ガス) 4.07 325 45.10 17
ガスファンヒーター(プロパン) 3.85 168 82.39 17
石油ファンヒーター 3.2 353 32.66 98
石油ストーブ 2.24 386 20.87 0
エアコン 2.2 581 13.63 470
オイルヒーター 1.5 124 43.50 1500
セラミックヒーター 1.2 124 34.80 1200

以上、個別地域や、個別料金プラン、個別暖房機器機器の暖房費・電気代を算出する場合は、それぞれの計算過程で各々の数値を当てはめることで計算が可能である。ただ、これらの数値を決めないと計算ができないので、それぞれにおいて妥当な、納得感が得られる値を置いて計算したというのが、上記計算結果の趣旨になる。