エアコン等で部屋を暖めるとなぜ空気が乾燥して加湿が必要になるのか?

暖房について記事を書いていたら、タイトルの「エアコン等で部屋を暖めるとなぜ空気が乾燥して加湿が必要になるのか?」という件に関する説明が必要になってきたので、簡単にではあるが説明をしておこうと思う。

この質問に答えるには、湿度という概念と、飽和水蒸気量という概念の2つについて説明をしなければならない。

まずは例えとして食塩水の話から始めることにしよう。水に食塩を溶かすと食塩水になるのは誰もが知っていることだろう。そして、水に溶かすことができる食塩の量に限界があることも知っている人は多いのではなかろうか?

塩分濃度の限界は水の温度によって変わるのだが、下記のサイトによると水温20度の時点での塩分濃度の限界は26.39%とのこと。つまり100gの食塩水に26.39gの塩が溶けているという状態だ。
塩はどれだけ水に溶けるか | 塩の情報室

じゃあそれ以上、塩を溶かそうとするとどうなるかというと、塩は溶けずに食塩水の下に溜まり続けることになる。これを飽和状態という。人間で言うともう飽きて食べられないという状態だ。


さて、ここで湿度の話に戻ろう。実は、空気中に溶ける水蒸気に関しても、先の水と食塩の関係と同じことが起きているのだ。空気を食塩水に例えるなら、水蒸気は塩に該当する具合だ。

つまり、空気中に溶けることのできる水蒸気の量というのは決まっているのだ。それを超えるとどうなるのかというと、スチームサウナのように、モクモクモクモクと湯気や霧が部屋中を漂うことになる。お風呂でこの状態を経験したことのある人もいるだろう。この状態が空気中の水蒸気が飽和している状態だ。

そして、この空気に水蒸気が溶ける飽和水蒸気量というのは空気の温度によって変わってくるのだ。わかりやすいのが例えばこのページかな。
湿度の公式
このように気温によって水蒸気が溶けることのできる限界量は大きく変わる。室温25度なら23.1g/m3だが、室温5度なら6.8g/m3しか溶けない。

そして、湿度というのはこの、今の室温の飽和水蒸気量に対する実際の水蒸気量の割合なのだ。例えば室温5度で水蒸気量が3.4g/m3なら湿度50%ということになる。では水蒸気量をそのままにして室温を25度に上げたら何が起きるか?

部屋の湿度が大幅に下がってしまうのである。つまり部屋が乾燥するということだ。ちょっと計算してみよう。先述の通り室温25度の飽和水蒸気量は23.1g/m3だから、現在の水蒸気量を3.4g/m3とすると、3.4/23.1×100=14.7。なんと室温5度の時点で50%あった湿度が、室温を25度に上げたばっかりに、たった14.7%になってしまったのだ。これが暖房で部屋が乾燥してしまう状態の正体だ。


なので、部屋が乾燥するのは、別にエアコンやファンヒーターが何か部屋の水分を取り去るような悪さをしているというのではなくて、単に温度が上がることで飽和水蒸気量が挙がってしまったことに起因しているのだ。暖房の種類は関係ない。それが例えデロンギのオイルヒーターだろうが、温度が上がれば湿度は下がる。それだけの話である。

だから室温を上げても湿度を下げたくなければ、加湿器が必須ということになる。ただ、加湿器は定期的に水を入れなきゃいけないし、吹き出し口の手入れをしないと雑菌やカビを撒き散らすタイプのものもあったりといろいろ面倒くさいという人もいるだろう。

その場合は、室温そのものを上げずに、部分暖房に徹するという手がある。例えばそれはこたつであったり、ホットカーペットや電気毛布であったりといった具合だ。そうした部分的にしか暖めない暖房であれば、室温自体は上がらないので、湿度の減少を避けることができる。

もしくは、ホテルなどでアナウンサーが実際に使っている手で、お風呂をガンガンに沸かせて、風呂の扉を開けっ放しにすることで、水蒸気を部屋にガンガン送り込むという手もある。自宅でやるのは光熱費もガンガンかかってしまうのでおすすめしないが。


以上、エアコン等で部屋を暖めると空気が乾燥してしまい、加湿が必要になる理由の理解に役立てていただければ幸いである。